今回はwordpressがACFというプラグインのアカウントを自社に移した乗っ取り事件について初心者向けに解説します!wordpress事業者ではないけどwordpressは使っていて技術的なこともある程度わかる立場からできるだけフラットに解説していきます。
今回の事件はオープンソースがプラットフォーマーとしてどうすべきなのかが問われるIT業界全体に影響を与える事件なので要注意です。
何が起こっているのか?
まずざっくり起こっていることを説明するとWP engineが管理するプラグインACFがwordpressに乗っ取られ、名前をSCFに変更、管理者もwordpress(Automattic)に変更しました。
強制的にプラグインの権利を移行したことになります。
これがなぜ問題視されているかというとこれを良しとしたらプラットフォームが好き放題できるので、wordpressコミュニティで一生懸命プラグインを作ってもうまくいったら没収されるので作るのやめようとなるからです。
プラットフォームとしてかなりリスクのあることなのですが、なぜこんなことをしたのか。それを説明するために各プレイヤーについて説明していきます。
Advanced Custom Fieldsとは?
「Advanced Custom Fields Pro(ACF Pro)」は、WordPressの標準機能であるカスタムフィールドを拡張するプラグインです。カスタムフィールドを使うと、「タイトル」や「本文」以外に「料理名」「価格」「アレルギー情報」などの専用入力項目を設定でき、情報の管理が容易になります。
WordPressの標準機能でもカスタムフィールドは使用可能ですが、その設定や編集はHTMLソースコード上で行う必要があります。ACF Proを利用すれば、これらの操作をWordPressの管理画面から簡単に行うことができ、多彩な機能も活用できます。ACF Proは2600万以上のダウンロード数を誇り、豊富な機能と長い歴史により、定番のプラグインとして支持されています。
もともとはElliot Condonによって開発され、そのあと2022年にWP engineに買収されています。
引用:https://capitalp.jp/2022/06/03/wp-engine-acquires-acf/
WP Engineとは?
ではWP Engineはどんな会社かというと下記が特徴になります。
- サービス内容: オープンソースのWordPressソフトウェアを使用して、独自のWordPressホスティングサービスを提供しています。
- 規模: 20万以上のウェブサイトがWP Engineのサービスを利用して運営されています。
- 所有構造: 2018年にSilver Lakeというプライベートエクイティファームに買収されました。
争いの時系列
起こったことを時系列に並べると下記
2024年9月21日:WordPress共同創設者のMatt Mullenweg氏が、WP Engineを「WordPressにとっての癌」と非難するブログを公開。
2024年9月25日:Automattic(WordPress.comを運営する企業)は、WP Engineに商標権侵害を理由とする差し止め通知書を送付。さらに、WordPress財団はWP Engineを名指しで商標ポリシーを更新し、Matt氏はWP EngineのWordPress.orgリソースへのアクセスを禁止。
2024年9月27日:一時的措置として、WordPress.orgはWP Engineへのアクセス禁止を10月1日まで解除。
2024年10月1日:WP Engineは、X(旧Twitter)上でプラグインやテーマの更新のための独自ソリューションの展開が成功したと発表。また収益の8%をAutomatticから求められていることを公表( https://gigazine.net/news/20241003-automattic-wp-engine-wordpress-license/
2024年10月2日:WP Engineは、AutomatticおよびMatt氏に対して、強要と権力の乱用を理由に訴訟を提起。
2024年10月9日:Matt氏は、WP Engineと無関係であることを証明する新しいチェックボックスをWordPress.orgのコントリビューターログインに追加。しかし、この措置に対して一部のコントリビューターやSlackコミュニティ内で反発が生じた。
2024年10月13日:Advanced Custom Fieldsを「Secure Custom Fields」に変更。ACFを上書きした。
wordpressは何を問題視しているのか?
WordPress共同創設者のMatt Mullenweg氏がwp engineに対して問題視しているのは下記
- wpというのがwordpressの商標を違反している
- wordpressにはコンテンツの編集履歴を残す機能があるがACFがそれを削除した形で運営している。これはwordpressの方針に背く。wordpressはコンテンツをちゃんと管理することを重要視している。wp engine側は速度改善のために仕方がないとのこと
- wp engineはwordpressのホスティングで利益をあげているのにwordpressへの貢献時間は少なく、ただのり状態
2や3はwordpressの規約などで守れなかったのかなあと疑問。app storeのように出す前に審査してそれを通ったところだけとしたいがwordpressがオープンソースというのがそれを邪魔している。
オープンソースの難しさ
とまあ今回の事件についてまとめてみました。
オープンソースがどこまで強制してどこまで自由にするかは難しいなと感じました。
WP engineみたいにオープンソースをセキュアに使いたいユーザー層に対応するプレイヤーも必要なのでそういう利益目的のところを開発の貢献以外でどう貢献してもらうかが重要なのかなと思いました。
wordpress使っていいの?
wordpressみんな使っていると思うのですが、短期的には特に問題ないかと思います。ただ今回の件でプラグインの開発などを止めるところが出るかもしれないので、長期的に見ると別に移れるようにしておくのはいいかもしれません。